第一話 出会い
斎森家の長女・美世は、異母妹・香耶が、父・真一と継母・香乃子に愛情深く育てられる一方で、ないがしろにされ、使用人同然の生活を送っている。やすらぎをくれるのは、心優しい辰石家の次男・幸次だけだった。

第二話 旦那さまという御方
「私が出て行けと言ったら、出て行け。死ねと言ったら、死ね」。そんな恐ろしい言葉とともに、清霞との生活が始まる。帰る場所のない美世は、自分が異能を持たない役たたずだと知られるわけにはいかなかった。 し

第三話 初めてのデヱト
突然訪れた、初めての〝デヱト〟。清霞は「何も欲しいものがない」という美世に、自分の買い物に付き合うように言う。これまで家を出ることがなかった美世にとって、街は新鮮な驚きに満ちていた。その頃、斉森家では

第四話 おくりもの
清霞にお礼がしたいと考えた美世は、ゆり江に相談し、手作りの組み紐を贈ることにする。清霞は、買い物へ行きたいという美世にお守りを渡し、送り出す。だが、美世は街でゆり江を待つあいだに香耶と幸次に出くわして

第五話 波紋
美世は、花との再会を手助けしてくれた清霞の部下・五道をもてなす準備に精を出す。だが、その幸せそうな様子を覗き見る者たちがいた。 怒りに震えるのは、美世の実母を憎んでいた香乃子のもと、常に姉より〝上〟

第六話 決意と雷鳴
美世が目を覚ますと、そこは幼い頃に閉じ込められたあの真っ暗な蔵の中だった。香乃子と香耶は、美世を執拗に痛めつけながら「自分から縁談を断れ」と迫る。これまでの自分なら、抗うことなく従っていただろう。でも

第七話 夏の華の淑女(モダンガール)
幸次は、香耶を見捨てず、共に没落した斎森家を立て直すことを美世に誓う。清霞と美世は手続きを行い、正式に婚約者となった。いずれ、本家に挨拶する日も来るだろう。美世は、清霞にふさわしい妻になるよう努めなけ

第八話 悪夢と不穏な影と
亡くなった異能者達の墓地「オクツキ」が暴かれたという。国に未曾有の危機が迫る中、帝の第二皇子・堯人に天啓が降りた。対異特殊部隊全体の指揮を執る大海渡、辰石家の新たな当主となった長男・一志とともに堯人に

第九話 夢に溺れて
連夜の悪夢に身も心もやつれ、街中で倒れてしまった美世。レッスンの時間も減らされ、葉月のような淑女には到底なれそうもない。清霞は心配するが、忙しい任務のさなかに自分のことで煩わせたくないという思いから、

第十話 夏の桜、そして過ち
美世を連れて薄刃家へと乗り込んだ清霞を迎えたのは、鶴木と名乗っていた薄刃新だった。そこへあらわれた、薄刃家当主にして美世の祖父・義浪。彼らは、美世に異能の力が目覚めようとしていることを伝えるとともに、

第十一話 母が遺したもの
なぜ美世の母親・澄美が斎森家に嫁ぎ、愛娘の持つ「夢見の力」を封印したのか?始まりは、美世が生まれる数年前、薄刃家を支えていた鶴木貿易の経営が傾いたことにさかのぼる。薄刃家存続の危機を嗅ぎつけ、多額の資

第十二話 暗闇の中の光
夢見の異能なら、昏睡状態の清霞を目覚めさせることができるかもしれない。必ず清霞を連れて帰ることを約束し、美世は隣でそっと目を閉じる。深い闇の中、次々と湧いてくる異形と戦っていた清霞は、美世の気配を感じ

第十三話 わたしの幸せのかたち
ついに、淑女レッスンの目標となっていたパーティの日がやってくる。冷酷無慈悲と噂される久堂清霞と正式な婚約に辿り着いたのは一体どんな令嬢であろうかと、来賓者たちの視線も熱い。美しいドレスをまとい、緊張し

第十四話 もう一つの久堂家
いまだ「夢見の力」をコントロールできず、もどかしい思いを抱えている美世。異能は新、淑女のたしなみは葉月の指導のもと、清霞の婚約者としてふさわしい女性になれるよう日々研鑽を続けていた。そんなある日、帝都

第十五話 新たな試練
自分に家族の温かさを教えてくれた清霞のため、芙由に認められようと奮起する美世。どれだけ罵られ、お仕着せを着せられて下女のように扱われても心折れることなく、屋敷の掃除に精を出していた。一方、付近の農村を

第十六話 異能心教と鬼
鬼に襲われたという村人を救うため、美世が異能を使おうとしたところへ駆けつけた新。一人で無茶をしようとしたことをいさめられた美世は新が見守る中、村人の精神世界へ入っていく。その頃、村はずれの廃墟では清霞

第十七話 秋風が運んできたもの
五道率いる分隊が異能心教の卑劣な罠にかかり、多数の負傷者が出たことから、人員補充のためかつて清霞の部下でもあった陣之内薫子が旧都からやってくる。「夢見の力」を持つ美世が甘水に狙われることを懸念した清霞

第十八話 心の奥は
屯所内の掃除を始めた美世は、隊員たちが薫子を悪しざまに言うのを耳にする。女性であるだけで蔑ろにされている薫子を励まそうと「秘密のお茶会」を催す美世。〝友だち〟の優しさに癒やされる薫子であったが、その表

第十九話 甘水直という男
帝が拉致される現場を目撃した新のもとへ駆けつけた清霞は、それが異能心教の陽動であることを見抜く。美世に危険が迫るという堯人の天啓ももたらされるが、ときは既に遅く甘水が屯所を襲撃していた。内部にも、結界

第二十話 年明け、ざわめき
新年を迎え、つかの間の休みを過ごす美世と清霞は初詣へ出かける。ただただ、清霞と一緒にいられることを願う美世。境内では、異能心教の信徒が鳥のような異形を見世物にし市井の人々の関心を集めていた。これ以上彼

第二十一話 夜の宴と遠望に映る雪
異能心教に加担する何者かが国の中枢に入り込んでいることが確信される中、宮城で御前会議が開かれる。葉月は美世の心を軽くしようと「婦女子の会」を催すのだが、なんと堯人も参加していた。堯人は美世に自分と似た

第二十二話 夢のしらせ
宝上が軍本部を襲撃し、甘水の計略は最終段階を迎えようとしていた。異能心教が仕向ける鬼は異能による攻撃を弾くようになり、清霞は解術が専門の辰石家当主・一志に協力を求める。甘水が澄美に別れを告げられたとき

第二十三話 約束
血に染まるからだを引きずりながらも美世に「愛している」と伝えた清霞であったが、甘水の計略により軍によってその身柄を拘束されてしまう。自分のせいで清霞を犠牲にしてしまったと思う美世は、誰に頼ることもなく

第二十四話 決意の出立
危険を顧みず屯所へ向かった美世。正面には異能心教の扇動で抗議の声をあげる民衆たちが押し寄せ、裏手には激しい戦闘のあとが広がっていた。「動くな!」。敵に囲まれてしまったかと思われたが、その声の主は百足山

第二十五話 夢の先にある想い
薄刃家が頂点に立つ理想の世界を築くため、愛した人の忘れ形見であり「夢見の力」を持つ美世を手中に収めようとする甘水は、五感さえも支配する恐ろしい幻覚で清霞を蹂躙していく。清霞のもとへ駆け寄ろうとする美世

第二十六話 春になったら…
異能心教が引き起こした一連の事件は、甘水の死によって終息を迎えた。新はこれまでの振る舞いの真意を明かし、ひとりよがりな行動で美世と清霞を傷つけたことを詫びる。自身の「夢見の力」を気がかりに思いながらも